「泣きっ面に蜂」「弱り目に祟り目」どちらも困っている状態に困ったことが重なって起こるたとえ。よく聞く慣用句だが、よもや自分の身にふりかかるとは…。
先日の土曜日。通常ならお休みなのだが、抜き差しならぬ事情があって、この日は出勤せざるをえなかった。かといって何か変わるわけではない。出勤日が一日増えて、休みが一日減っただけ。普段と変わらず7時前には自宅を出て、8時半には事務所につく。いつも通りの一日が始まるはずだった。
途中ガソリンがあまり無いことに気付いた僕は、近くのセルフスタンドで給油を済ます。普段なら忙しい出勤途中には給油しないのだが、今日は本当なら休みだったのだという心の甘えからか、多少の時間ロスも厭わない。思えばこれがすべての始まりだった。
しばらく走って、ちょうど高速道路の入口を目の前にしたところで、「すき屋」の看板が目に入る。最近できたこのお店。周囲には牛丼280円ののぼりが並ぶ。近い内に行きたいとは思っていたが、朝食をすでに済ましている僕には無用だ。
そう思って通り過ぎようとしたところ、その「すき屋」の駐車場から1台の車が左折して道に出てきた。真っ黄色のHONDAのFit。趣味の悪い車だなーと横目で見ていると、なんと!
その車はそのまま僕の車に突っ込んできたのである。追い越し車線を走っていた僕の車に。
ドッゴーン!!鈍い音が閑静な朝の道路に響き渡る。
んー。ちょっとごめんね。まったく意味がわかりませんけど…。目の前の信号を確認すると「青」。まぎれもなく「青」。むしろ藍より青し。え?なんですか?暗殺?誰の差し金???幸いにも僕には大きな外傷はなかったが、車を確認するとリアタイアのあたりがなんとも恥ずかしい格好…じゃなくて、かわいそうな姿になっていた。よくもこんな日にぶちかましてくれたな。申し訳なさそうに黄色いFitから出てきたのは、僕より若いなんとも頼りなさそうな男だ。溢れる憤りを抑えて、警察にむかう。
「右側をまったく見ていませんでした。」聴取で彼はこんなことを言っちゃう。左折するのに右側を見ないとか無い。宍戸開とケイン・コスギでも、もうちょっと計画的に挑戦するわー。30分ほどで聴取は終わったので、その足で病院へ。外傷はなくても衝撃は結構あったので一応検査を。この時点ですでに8時半だ。結果は外傷性頸部症候と腰椎挫傷。要はムチウチですね。MRIまで撮ってもらい、病院を出たのが12時前だった。
わかりきったことだが既に大幅に遅刻だ。今日は大事な仕事もあったからの休日出勤だったのに。しかし、こればかりは仕方がないと思うしかない。気持ちを切り替え、1時ぐらいを目標に再出発する。
が、今度は高速道路が意味わからんぐらい渋滞してるー。
まったくと言っていいほど動かない。おそらく伊勢神宮に向かうしょーもない連中のおかげさまである。1時間近く足止めをくらい。結局事務所に着いたのは2時過ぎだ。なにが楽しくて土曜日に7時間も通勤に費やさなならんのだ。
それどもせっかく来たのだから仕事をしようと、パソコンにログインしようとするも、「端末使用時間外」と出る。
あれー。おっかしーなー。休日でも使えるようにと申請上げたはずなのに。この時点で僕が涙目になっていたということは皆さんにとっても想像に難くないだろう。せっかくの休みを潰して、ほんまに自分が何をしてるのかわからなくなった。
不意に電話が鳴る。こんな僕でも電話ぐらい出れるぞ。くよくよしていても仕方がない!今日ここに来た意味を見出さねば!涙をぬぐったその手を受話器に伸ばす。
「はい!お電話ありがとうございます!・・・・・はい!・・・・・はいそうです。はい。・・・・・いえ。
申し訳ございません・・・・・。」
苦 情 の 電 話 だ !